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地域イノベーション学会設立趣意書

 明治維新以降の150年に渡る経済発展によって、日本は世界屈指の経済大国となり、先進諸国の中でも高いレベルの社会インフラと経済基盤を有する国家となりました。その一方で、大都市圏への産業と人口の集中による不均衡な経済圏の形成が行われ、地方における過疎化と高齢化を招き、大都市圏以外の地方自治体では地域社会の崩壊が起こりうる状況に直面しているのも事実です。経済発展(Economy Development)とは、資本の蓄積や技術力の進歩に伴って、未発達で低所得の国家経済が近代的な産業経済に生まれ変わるプロセスのことです。日本は20世紀において経済発展で最も成功した国であると自負すべきですが、経済発展後の社会の在り方について考慮のないまま21世紀を迎え戸惑っており、経済発展の結果が必ずしも社会の幸福に繋がっていないように思えます。

 このため経済成熟期における理想的な社会の在り方を議論し、創造していくことが、今の日本には重要な活動となります。また、そのような活動は、経済発展の弊害によって疲弊した大都市圏以外の地域から起こってくるべきであると思います。このような認識に立ち三重大学は、平成21年4月に大学院地域イノベーション学研究科を設立しました。これは、三重県地域の産業界から強く求められたことが理由であるとともに、経済発展を成し遂げた日本において、地方にも人々が幸福に住み続けられる社会を創造するような「地域社会における幅広い変革(=地域イノベーション)」への取り組みが、経済発展によって得られた成果を日本国民が享受できるようにするための「仕上げの仕事」になると考えたからです。

 三重大学では、「地域イノベーション学」を、「地域の中で形成・蓄積してきた研究成果と知識を総合的に活用することで、地域立脚型の産業が抱えている成長障害要因を克服するための具体策を探求し、産学官連携によって地域社会を活性化させるための方法論を見出す学問領域」と定義しています。また三重大学では、「地域イノベーション学」を、基礎的な考察で構築した理論を実践の場で検証・高度化していく応用領域の学問であると位置づけ、産業界、自治体と連携した活動を題材に地域社会を活性化させる方法論の研究・検証を行い、研究活動を通して学生への実践教育を実施してきました。

 地域イノベーション学研究科の設立がきっかけとなり、産業界、自治体、大学の関係者が地域社会の活性化のために同じ方向を向いて協働する取り組みが三重県内の数多くの場所・場面で見られるようになりました。また、このような沢山の取り組みに参加している当事者が、それぞれの取り組みについて忌憚なく意見交換し、切磋琢磨しながらより効果的な活動へと高めていくための「交流の場」が必要な段階にもなりました。さらには、三重県と同じような産業情勢にある国内外の地域における同様の取り組みを行っている方々との学術的な交流も必要となるでしょう。

 以上のような認識に立ち、地域を大切に思うあらゆる立場の人々が裃を脱いで青臭い議論を行うことで地域発のイノベーションを生み出していくような「知の創発の場」を創造するために、「地域イノベーション学会」を設立することを、ここに決意いたしました。